
複雑な問題を解くためには、複雑な情報体系を構築できなければなりません。

問題が複雑に見える理由は、多くの大小さまざまな問題がひどく絡み合っているからです。
誰もが頭を抱えるほど問題が複雑に絡まり、何が問題で、どう解けばいいのか途方に暮れた経験があるはずです。

私はこのような複雑な問題に、「無名(ななし)」氏という名前を付けました。
なぜなら、複雑な問題は何が問題なのかを把握することさえ難しく、簡単に名前を付けることもできないからです。

私は、もし複雑な問題が人間だとしたら、「進撃の巨人に登場する巨人のようなものではないか」と考えたりします。
手に負えないほど巨大な問題が、残酷で予想もしない方法で自分を攻撃してくるからです。
ならば、巨いなる敵に対抗するために、私たちがすべきことは何でしょうか。

解決策を作らなければなりません。
複雑な問題が巨人なら、解決策は「木」です。

私はこれを「知識の木」と呼んでいます。

AIの父と呼ばれるマービン・ミンスキーが使用した用語です。
ミンスキーは、人間がどのような方法で考えるのかを、知識の木を通じて目に見えるように説明しました。

ミンスキーは、難しい問題を解決する唯一の方法は、その問題を小さな問題に分割することだと考えました。
それでも難しすぎるときは、小さな問題をさらに分けるよう助言しています。
こうすることで、難しい問題は複数の下位目標と下位問題に枝を伸ばした木のような形になり、問題の輪郭がはっきりと現れます。
ミンスキーはこの木を「知識の木(Knowledge-Tree)」と呼びました。

知識の木を成長させるには、問題の中に答えを見つけなければなりません。
複雑に絡まった問題の中にある大小の塊を解きほぐし、知識の木を成長させるための養分にしなければならないのです。
問題の中には、どの枝に養分をさらに与えるべきか、どの枝を剪定すべきかというヒントが隠されています。

知識の木という思考の組み合わせが十分に熟したなら、そこから得られた結実をもって「無名氏」に対抗する解決策を作るべきです。
解決策は概念である場合もあれば、物質的な道具である場合もあります。
『進撃の巨人』では、巨人問題に対する解決策として「立体機動装置」が登場します。

人間がいかにして立体機動装置という解決策を作り得たかは、公式スピンオフ作品『Before the fall』に詳しく描かれています。
巨人問題への解決策は、「装置」、「新型装置」、そして「立体機動装置」の順に発展してきました。

「装置」や「新型装置」が固有の名前を持たず普通名詞で呼ばれていた事実は、まだ問題を解決するための核心を把握できていない状態であることを示しています。
まだ知識の木が十分に熟していない状態だったのです。

ついに「立体機動装置」となって初めて、解決策に固有の名前が付きます。
この装置は、動く巨人を倒すためには「立体的な機動」が重要であるという事実を明確に示しています。
では、立体機動装置を発明した人類は、どのような方法で知識の木を発展させたのでしょうか。
漫画を例に説明しますが、情報理論はあらゆる分野に適用できるため、皆さんの仕事にも十分に応用できる内容です。

複雑な問題を解くためには、複雑な解決策を構築できなければなりません。
しかし、複雑な解決策を作るべきだからといって、単に複雑であればいいという意味ではありません。

複雑な解決体系をどう構築すべきかについては、複雑系の科学者スチュアート・カウフマンがヒントを与えてくれます。
カウフマンは、複雑さが持つ様相には大きく分けて3つの局面があると言います。

「秩序局面」、「混沌局面」、そして「臨界局面」です。
これら3つの局面は、以前の動画で扱った「守破離(しゅはり)」ともつながります。

秩序局面は、教えを守る「守」の段階。

混沌局面は、教えを打ち破る「破」の段階。

臨界局面は、教えを守ると同時に超越する「離」の段階と見なすことができます。
順番に、複雑さが持つ様相を見ていきましょう。
1. 秩序局面

秩序の中に長く留まることが、必ずしも良いことばかりではありません。
カウフマンは、秩序局面は情報同士の結合が非常に強く、多少の問題には揺るがない安定性を持っていると述べています。

しかし、逆に考えれば、変化の可能性がない固定された体系とも言えます。

では、なぜ情報がこのように硬い枝のように固定された状態になるのでしょうか。
それは、繰り返される検証プロセスを経るからです。

特定の問題を解決した成功体験が多い組み合わせほど、体系はその方式を正解として受け入れ、ルールとして固めてしまいます。

もちろん、環境が全く変化しない状況であれば、このような強固に固定された情報体系は効率が良いでしょう。
しかし、強固な秩序がかえって毒になることもあります。

大きな問題に直面したとき、柔軟に対応できず、ポキリと折れてしまう限界があるのです。

『進撃の巨人 Before the fall』に登場する既存の武器が、秩序局面をよく表しています。
『Before the fall』は、本編より約70年前を描いた『進撃の巨人』のスピンオフ作品です。

この作品の中の人類は、依然として「巨人」という問題を解決できていません。

かろうじて、剣、炸裂弾、大砲といった武器を活用して巨人に対抗しようとしていました。
それらは、それまで人類が無数の検証を経てきた武器だったからです。

しかし、環境が変わり巨人が登場したことで、既存の武器だけではもはや問題を解決できなくなりました。

巨人の弱点はうなじにありますが、人間は「高さ」という障壁を簡単に越えられなかったためです。
さらに、巨人は再生能力まで強力で、既存の剣では簡単に傷を負わせることさえできませんでした。
人類は巨人という新しい問題に対抗するため、新しい解決策を考案しなければなりませんでした。

そのためには、既存の武器が持つ情報体系の秩序を崩す「混沌」が必要でした。
2. 混沌局面

混沌にも長所と短所があります。
カウフマンは、混沌局面は情報同士の結合が弱く、小さな問題でも容易に変化すると述べています。

多様性が豊富だとも言えますが、逆に考えれば、予測不能に揺れ動く不安定な体系とも見なせます。

では、なぜ情報がこのように折れやすい枯れ枝のように散らばった状態になるのでしょうか。
体系が検証不足の情報ばかりで満たされたり、新しい情報が無分別に取り入れられたりするためです。
特定の問題を解決した検証プロセスが不足している情報体系ほど、中心的な文脈を掴めず、状況に応じてバラバラに砕ける危険があります。

もちろん、環境が激しく変動する状況であれば、このように多くの可能性を開いておいた情報体系が新たな革新へとつながることもあります。

しかし、小さな問題に対しても体系を安全に維持できず、脆く崩れ去るという限界があります。
『進撃の巨人』に登場する立体機動装置の前身である「装置」が、混沌局面をよく表しています。

立体機動装置の以前のモデルである「装置」は、『Before the fall』の世界観において「発明王」と呼ばれたアンヘルが作った新しい武器でした。
「装置」は、人間が巨人よりも低い位置で不利に戦わなければならない問題への解決策でした。

アンヘルは高さの問題を解決するために、「氷爆石(ひょうばくせき)」という新素材を活用しました。
氷爆石は強い爆発力を持つ燃料であるため、うまく活用すれば人間が空中に浮かび上がることができました。

しかし、この装置は新しい解決策であるため、検証プロセスが必要でした。
アンヘルは、この新しい武器が持つ限界を直接体験せねばなりませんでした。

「装置」は上下にしか移動できないように動きが制限されており、アンヘルは動く巨人を相手にするのに苦労しました。

また、「装置」は背嚢(リュックサック)に近いと思えるほど重いものでした。

さらにはワイヤーの強度までもが弱く、紐が切れそうになる危機さえありました。
「装置」は既存の武器にはなかった新しい移動方式で、巨人という問題を解決しようとしました。

しかし、「装置」は安定性がなく、脆くも破綻してしまいました。

この問題を解決するには、「装置」が持つ混沌を鎮め、「臨界局面」に到達しなければなりません。
3. 臨界局面

解決策は「カオスの縁」にあるとき、最も真価を発揮します。
「カオスの縁」は、複雑系の科学者カウフマンが扱った核心的な用語です。
カオスの縁は「臨界局面」とも呼ばれます。
画家アンリ・マティスの作品『ダンス』のように、秩序と混沌が適切に混ざり合いながら動く、境界に留まっている状態を指します。

このようにして作られた体系には、強固な部分があります。

同時に、柔軟な部分も備わっています。
強固さと柔軟さがダンスを踊るように調和した体系は、最も複雑でありながら、高度に組織化された行動を見せます。
では、情報体系はどうすれば「若枝」のように強固で柔軟な状態になれるのでしょうか。

強固に検証された情報の上に、新しい情報が適切な比率で絶えず流入し続けなければなりません。

それだけでなく、この状態にあって初めて、新しい革新である「創発(そうはつ)」が起こります。

創発が起きると、個々の構成要素同士が自律的に緊密な相互作用を行い、部分のときには見られなかった新しい高次な性質を生み出します。

部分を超越した「生きた全体」となった情報体系は、強固かつ柔軟に、変化する問題を解決します。

『進撃の巨人』に登場する「立体機動装置」がその良い例です。
立体機動装置は、混沌と秩序が適切に混ざり合った「臨界局面」に到達した武器です。

立体機動装置には、混沌のような新しい発想があります。

それまでは「人間が巨人のうなじの高さまで素早く移動して攻撃する」という発想を、誰も出せませんでした。
しかし、この新しい発想は可能性がまだ検証されておらず、安定性がありませんでした。
混沌に秩序を加えるには、検証プロセスを通じた改善が必要です。

最初の検証は装置を発明したアンヘル自らが行いましたが、アンヘルが戦えなくなった後は、この役割を引き継ぐ者が必要でした。

そして長い時間が流れた後、その役割はキュクロへと伝承されます。
こうした検証プロセスの過程で、装置のワイヤー、重量、耐久性、操作性といった様々な問題が発見されました。
そして、これらの問題を改良していくことで、混沌に秩序が宿り始めます。

以前のモデルである「装置」や「新型装置」とは異なり、立体機動装置に至って初めて、新しい高次な機能である「両手の自由」が生まれます。

それだけでなく、臨界局面に到達した立体機動装置は、環境の変化に合わせて自己を再生産し始めます。

硬い鎧をまとった巨人が現れたときには、立体機動装置に爆薬を装備した「雷槍(らいそう)」が登場します。

対人戦闘が重要になった局面では、立体機動装置に銃を組み込んだ「対人立体機動装置」が作られたりもしました。
このように、臨界局面への到達は困難ですが、一度この局面に達すれば、自ずと秩序と構造が形成されていきます。

カウフマンは、こうした原理が生命系、技術系、経済系といったすべての複雑系に広く適用できる普遍的な法則であると考えました。
では、この法則を実際の私たちの生活にどのように活用できるでしょうか。
目の前にある問題を解決するための「生きた情報体系」を作るには、どうすればいいのでしょうか。

情報を収集し、編集できなければなりません。
まず、情報を集める方法から見ていきましょう。
フルバージョンはYouTube「突然変異の創作法 第4-1話」でご覧いただけます